2011年4月13日水曜日

レーザーで腫瘍細胞の増殖抑制・縮小消滅

近畿大、フェムト秒レーザーで生成の放射線がマウスのがんを抑制

近畿大学の河島信樹リエゾンセンター特任教授、宮澤正顯医学部教授のグループは、フェムト秒(フェムトは1000兆分の1)レーザーで生成した放射線が、マウスに皮下移植した腫瘍細胞の増殖抑制・縮小消滅などに有効なことを確認した。生成放射線のどのエネルギー成分が効果を発揮しているかなど、がん抑制のメカニズム解明を進めるとともに、試作したフェムト秒レーザーがんピンポイント治療器のコンパクト化、操作性向上などを目指す。

2006―10年度の文部科学省社会連携研究推進事業の助成を受けて行った、医工連携による医療技術イノベーション研究の一環。レーザー加工のレザック(大阪府八尾市)が研究協力した。

試作した治療器の光源は中心波長780ナノメートル(ナノは10億分の1)、パルス幅800フェムト秒、パワーがパルス当たり1ミリジュールのチタンサ ファイアレーザー。このフェムト秒レーザーをヘリウムネオンレーザーで同軸調整。何回かミラー反射させて鉄成分主体の金属ターゲット表面に集光。反対側か ら出る放射線をがん細胞へ照射する。

ターゲット材はフェムト秒レーザーの1パルスで穴があくため巻き上げ式のテープ状にした。常時新しい面にレーザー集光することで60分以上連続の安定放 射線源が得られ、生成放射線成分のエネルギースペクトル解析では電子線とともに、6.4キロ電子ボルトにピークを持つX線の発生を確認した。

またマウス腫瘍とヒト由来上皮性腫瘍の培養細胞、腫瘍細胞を皮下移植したマウスへの照射実験で、各培養細胞は一定以上の線量照射で死滅。マウスの移植細胞も線量によらず増殖が抑えられ、一定以上の線量で縮小・瘢痕(はんこん)(傷跡やケロイド)化することが分かった。

試作治療器は直径15ミリメートルのパイプをつないだ多関節自在アーム型。これを腹腔(ふくこう)鏡タイプの10ミリメートル以下にするのは現時点で可 能という。ただ、よりフレキシブルな内視鏡型ファイバーへのフェムト秒レーザー導入は「現状では難しい」(河島特任教授)と見ている。

2011年4月13日 朝日新聞

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