2011年11月30日水曜日

がん治療ローンの利子を補助

がん先進医療、鳥取県がローン制度 国内初 利子相当額、県が助成

 鳥取県は、県民が健康保険の対象とならない高額ながんの先進医療を受ける際に、利子相当額が助成されるローンを、指定する金融機関で組むことができる全国初の制度を創設した。指定機関として山陰合同銀行と鳥取銀行が12月1日に県と協定を締結。合銀は2日から、鳥銀は来年6月ごろから運用を開始し、ローンの申し込みに応じる。

 がんの先進医療を受けるための借金に対する利子補給制度は、すでに数県で創設されているが、いずれも自県にある高度医療施設を利用する場合に限られている。これに対して鳥取県の制度は、厚生労働省が認めるがんの先進医療であれば国内どこの医療機関で受けても対象となる。

 事実上無利子となるこの制度による借り入れ額は上限300万円で、最大6%までの利子相当額を最大7年まで助成。専用のローン自体を指定金融機関が商品化するのも全国初で、すでに「鳥取県がん先進医療費ローン」を商品化した合銀は、金利を年5・8%と決めた。

 ローンを組むためには、まず病院に治療実施計画書を作成してもらい、「先進医療分」の医療費を算出。これを県が審査して同制度の対象と承認されれば、指定金融機関に専用ローンの利用を申し込むことができる。金融機関側の審査を通ればローンが組まれ、利用者は1年間に支払った利子分の補給を翌年初めに申請するシステムとなっている。

2011.11.30 産経新聞

2011年11月29日火曜日

がんリスク高い食事とがんリスクを下げる食事

肉食女子、がんリスク1.5倍 8万人を10年調査

 肉類を食べる量が多いと、結腸がんになるリスクが約1.5倍高いことが、国立がん研究センターの研究班の調査でわかった。大阪や岩手、茨城、秋田、新潟、長野、高知、長崎、沖縄など9府県の45~74歳の男女約8万人を10年以上追跡した。欧米より肉を食べる量が少ない日本では、これまで結腸がんと肉食の因果関係が不明だった。

 研究班は、調査追跡期間中に結腸・直腸がんになった男性714人、女性431人について肉類を食べる量で5グループにわけ、がんの発生率を比べた。

 すると、男性は、ハムやソーセージも含めた肉類全体の摂取量が1日約130グラムのグループは、20グラムのグループの約1.4倍、結腸がんのリスクが高かった。女性は、牛肉や豚肉を1日約90グラム食べるグループは、約10グラムのグループの約1.5倍、結腸がんリスクが高かった。

2011年11月29日 朝日新聞

2011年11月28日月曜日

「息」の匂い検査でがん発見の新技術

胸部X線検査より、喀痰検査より、診断感度が高い?

肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」登場
がん特有の匂い物質と呼気検査
 この8月、欧州呼吸器学会誌に、吐いた息から肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」の研究結果が報告された。
 それによると、肺がんに特有の匂いを嗅ぎ分けるように訓練された犬は、肺がん患者の呼気サンプル100例中71例を「陽性」とし、健康な人の呼気、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の呼気400例に対しては93%に「陰性」の判断を下した。一般診療で胸部X線による肺がんの検出感度は80%、喀痰検査は40%前後であり、堂々、それ以上の結果が示されたというワケだ。
 臭覚に優れた犬が「がんの匂い」に反応することは以前から知られている。最初の報告は1989年に医学雑誌「Lancet」に掲載された論文。コリーとドーベルマンの混合種の雌犬が飼い主のホクロに異常な関心を示したため、不審に思った飼い主が受診したところ、悪性黒色腫が発見された例が紹介されている。
 これが世界中で大反響を呼び、同様の報告が相次いだ。なかには通常の尿検査で「陰性」だった患者が探知犬の「陽性」判定を受けて、精査したところ腎がんが発見されたという例もある。日本では2005年から続けられている千葉県南房総市の「セントシュガー がん探知犬育成センター」の研究が嚆矢。今年初め、医学誌「Gut」に報告された九州大学医学部第二外科のグループとの共同実験では、ラブラドールレトリバーの「マリーン」(9歳、雌犬)が9割以上の確率で大腸がん患者の呼気サンプルを嗅ぎ分けた。
 ただし、臭覚の個体差や特殊訓練に費やす時間とコストからして検診施設に「がん探知犬」が配属される、なんてことはありえない。そのあたりは研究者も現実的で、実際は探知犬で存在が証明されたがん種特有の匂い物質「揮発性有機化合物」の特定に力を入れている。これがかなえば、すでに一般的に使われている匂い感知器の「電子鼻」を医療用に改良し「匂いの“腫瘍マーカー”による究極の低侵襲検査が実現する」(臨床医)だろう。
 日本人の嗜好からするとがん探知機能搭載の犬型ロボットを開発しそうだが、ともあれ、がん検診に「呼気検査」項目が追加される日は近いかもしれない。


2011年11月28日 週刊ダイヤモンド

2011年11月24日木曜日

がん細胞の取り残しを見つける方法

がん細胞を光らせる試薬開発

CTなどでは判別が難しい大きさ数ミリのがんを光らせて、ごく短時間で検出できる試薬を、東京大学などの研究グループが開発しました。肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。

東京大学の浦野泰照教授とアメリカ国立衛生研究所の小林久隆主任研究員らのグループは、がん細胞の表面に多く現れる「GGT」という酵素に注目し、この酵素に触れると化学変化を起こして緑色に光る試薬を開発しました。

そして、ヒトの卵巣がんを移植したマウスの腹部に試薬を吹きつけたところ、1分ほどで、点在していた1ミリ以下のがんが光りだし、肉眼ではっきりと確認できたということです。今のところ、がん細胞を検出できる確率は卵巣がんで3分の2ほどですが、研究グループでは、さらに細胞の性質を調べて確実な検査法にしたいとしています。
今回利用したGGT酵素は、肺がんや肝臓がん、それに乳がんや脳腫瘍などにも現れるということで、実用化できれば、手術の際に肉眼で確認できないがんを見つけ、取り残しを防ぐ技術につながると期待されています。浦野教授は「手術中にスプレーして小さいがんをその場で見ることができれば、見落としの問題を克服できる。実用化に向け研究を進めたい」と話しています。

 

2011年11月24日 NHK

2011年11月22日火曜日

副作用が無く、効果大の抗がん剤新薬

副作用ほとんどない抗がん薬、浜松医科大が開発
浜松医科大(浜松市)は22日、副作用を軽減させる抗がん剤開発を進め、動物実験で効果が得られたと発表した。今後、臨床試験に入り、実用化を目指す。
研究グループの杉原一広准教授によると、悪性腫瘍(がん)は1~2ミリ以上になると、栄養を取り込むため「新生血管」を生じさせる性質がある。グ ループは、アミノ酸がつながってできる「ペプチド」の一種が、新生血管に集まりやすい特性を発見。新生血管だけに薬が運ばれるよう、ペプチドと組み合わせ た抗がん剤を開発した。
同大が、米サンフォードバーナム医学研究所と行った共同研究で、この抗がん剤をがん細胞を持つマウスに投与したところ、従来の約40分の1の量 で、19日目にがん細胞がほぼなくなり、副作用は全く認められなかったという。成果は、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表される。
2011年11月22日 読売新聞

2011年11月15日火曜日

新素材には発がん性が指摘

構造により発がん性に大きな差

さまざまな分野での活用が期待されている炭素で出来た新しい素材「カーボンナノチューブ」は、一方で発がん性が指摘されていますが、構造によってがんの起きやすさに大きな差があることが、名古屋大学などのグループが行った実験で分かりました。

実験を行ったのは、名古屋大学の豊國伸哉教授らのグループです。カーボンナノチューブは高い強度があり、電気をよく通すことから、携帯電話の電池などに使われ、今後、さらに広い分野での活用が期待されていますが、微粒子の状態で大量に体に取り込まれると、がんの一種「中皮腫」を引き起こすおそれがあると指摘されています。

グループでは、太さや硬さを変えた3種類のカーボンナノチューブを水に混ぜてネズミの腹部に大量に注射しました。その結果、太さが直径50ナノメートルで硬く曲がりにくいカーボンナノチューブは、細胞に刺さり、すべてのネズミが中皮腫を発症したのに対し、直径が15ナノメートルと極めて細く曲がりやすいものでは、発症したネズミはいませんでした。

また、硬くて曲がりにくくても、直径を150ナノメートルと太くしたものでは、発症率は17%にとどまりました。豊國教授はヒトへの影響はさらに研究が必要だとしていますが、「太さや硬さといった構造で発がん性の度合いが異なることが分かったので、研究を進めれば、より安全なカーボンナノチューブの開発に役立つ」と話しています。

2011年11月15日 NHK

2011年11月9日水曜日

血液1滴で精度100倍以上のがん検査

島津製作所、がんの目印検出感度100倍に
 島津製作所は8日、病気の目印になる分子を従来の100倍以上の感度で検出できる技術を開発したと発表した。検出に使う抗体たんぱく質の構造を、目印分子に結合しやすいよう改良した。ノーベル化学賞受賞者でもある同社の田中耕一フェローは記者会見し、「がんなどの目印を血液1滴から検出できるようになる。病気の診断や原因解明に役立ち抗体医薬の改良にもつながる」と期待を語った。
 抗体は体内で免疫反応を担う。アルファベットの「Y」に似た形のたんぱく質で、2本の“腕”を使って特定の分子に結合する。田中フェローらは腕の付け根部分に、ばねのような形のポリエチレングリコールを組み込んだ抗体を設計した。2本の腕は通常、固定されほとんど動かないが、新しい抗体では回転や伸び縮みするため、目的の分子とより結合しやすい。
 アルツハイマー病の原因物質の一つとされる「アミロイドベータ」を使って実験し、結合能力が従来の100倍以上に高まることを確認した。ごく微量しか存在しない分子も検出できるようになる。血中の微量なたんぱく質を検出し、がんやアルツハイマー病などを早期診断する技術につながる。少ない投与量でも高い効果が得られる抗体医薬を開発できる可能性もあるという。
2011年11月8日 日本経済新聞 

ウイルスから優れた坑がん作用の新薬候補

韓国人研究チーム、画期的な抗がん新物質をウイルスから発見
ウイルスから坑がん作用の優れた新物質が発見された。韓国生命工学研究院のキム・ミョンヒ博士と米南カリフォルニア大学のチョン・ジェウン教授チームは8日、新しい坑がん治療剤を開発できる可能性が大きいこうした新物質を見つけたと明らかにした。研究結果はネイチャー姉妹紙の「ネイチャー構造分子生物学誌」11月号電子版に発表された。
人体にはがんと戦う代表的な遺伝子の「p53」がある。この遺伝子がまともに作動しなければがんにかかりやすくなり、がん治療もうまくできない。この遺伝子を操縦する2種類の酵素としてたんぱく質分解抑制酵素(HAUSP)とたんぱく質分解誘導酵素(MDM2)がある。
科学者はこの2種類の酵素を調節できる物質をこれまで探していた。研究チームはHAUSPとウイルスたんぱく質が混ざり合った物質の構造を究明し、ウイルスから出たペプチド「vif1、2」を見つけ出した。このペプチドは少ない数のアミノ酸でできたたんぱく質で「p53」ががん細胞を殺せるよう助ける。
2011年11月09日 中央日報

2011年11月2日水曜日

抗がん剤による味覚障害

薬が招く味覚障害
抗がん剤では高頻度
超高齢化で増加傾向
 「味が分からない」「口の中が苦い」などの症状が現れる味覚障害。その原因の一つに薬の副作用がある。中でも抗がん剤は高い頻度で異常を引き起こすとされるが、ほかにも多種多様な薬剤が引き金になり得る。年を取ると老化で味覚が鈍くなるのに加え、生活習慣病などで薬の服用も増える。超高齢化が進む日本で、薬剤性の味覚障害は増加傾向にあるという。
▽80%近い薬も
 「吐き気や骨髄抑制といった抗がん剤によるほかの副作用に比べると、味覚の変化は不明な点が多く、十分な対処がされていない」。四国がんセンター 薬剤科の田頭尚士さんはこう指摘する。
 発生状況を明らかにし、患者への的確な情報提供につなげようと、田頭さんらは昨年6~7月、外来でがん化学療法を受けた患者381人を対象に、抗がん剤投与後の味覚の変化についてアンケートを実施した。
 その結果、「味覚変化があった」と答えた人は全体の47%。薬剤ごとの発生頻度を調べると、最も高かったのは「エピルビシン」で78・9%。次いで「シクロホスファミド」75・0%、「ドセタキセル」73・2%。また、乳がん治療で用いられるエピルビシンとシクロホスファミドの併用では実に84・6%が味覚の変化を訴えた。 田頭さんは「極めて多くの患者さんが味覚の異常を感じていることが分かった」と話す。
▽240種類
 そもそも味覚障害とはどういうものか。
日本大医学部 の池田稔教授(耳鼻咽喉科)によると、症状で最も多いのは味が分からなくなる味覚低下。次が、何も食べていないのに口の中が苦くなる自発性異常味覚。頻度は低いが、本来の味と違う感じ方をする錯味症や、何を食べてもまずく感じる悪味症もある。
 舌の表面や、軟口蓋と呼ばれる口の奥の部分には、味細胞が集まってできた「味蕾」という組織がある。この味蕾が味を受け止め、味覚神経を通じて情報を脳に伝える。こうした一連の経路のどこかに異常が生じると、味覚がおかしくなる。
 原因はいろいろだが、同大が以前、味覚外来の受診者2278人を調べた結果によると、最も多かったのが薬剤性で、全体の約22%を占めた。
抗がん剤だけでなく、味覚障害を引き起こす可能性がある薬剤は多い。分かっているだけで約240種あり、降圧剤や利尿剤、抗生物質、高脂血症薬、抗不安薬など薬効もさまざまだ。
 ▽亜鉛と結合
「体内で亜鉛が不足すると味細胞のターンオーバー(生まれ変わり)が遅くなり、強いダメージを受けることが動物実験などで判明している。薬には、亜鉛と結合して体外に排出する作用を持つものがあり、味覚障害を引き起こすと考えられている」と池田さん。
 ただ、薬剤性のすべてが亜鉛との関連で説明できるわけではない。薬剤による味細胞の直接的破壊や神経伝達の阻害、特定遺伝子の働きの抑制などが原因となっているケースもあるらしい。
 味覚障害は食欲不振を招き、栄養状態を悪化させる。QOL(生活の質)を低下させるだけでなく、治療の妨げになることもある。薬剤性が疑われたら、原因とみられる薬の減量や中止、ほかの薬への変更を行い、亜鉛製剤などを内服するが、抗がん剤のように簡単に減量や中止をできない薬もある。前向きに治療を受けるために、少しでもおいしく食べられるような献立や調理の工夫も必要だ。
2011年11月1日 共同通信