2011年10月27日木曜日

マムシ,さそりの毒からがん新薬作成

イラン人研究者、新たな抗がん構造を発見


イラン人研究者が、がん細胞を抑制するための新たな原子構造を発見しました。
この新たな構造は、ICD85と呼ばれ、ラーズィー血清開発ワクチン研究所で、マムシやさそりの毒から作成されました。
ラーズィー血清開発ワクチン研究所のザーレ研究員は、「この新たな構造は、15年に及ぶ研究によって発見されたものであり、乳がん、白血病、腎臓がん肺がんを抑制する効果がある」と語りました。さらに、「現在、この新たな構造は、ウサギとマウスを対象に実験が行われ、成功を収めている」としました。
また、「この新たな構造は、人間の生きた細胞に対しても実験的に用いられ、好ましい結果が得られている」としています。現在、がんの治療法のひとつに放射線治療がありますが、それは健康な細胞にも害を及ぼします。
ザーレ研究員は、「様々な実験は、この新たな構造なら、ほぼ完全にがん細胞のみを標的にすることができることを示している」と語りました。
さらに、「数々の調査によれば、この新たな原子構造を利用しても、がん患者の脱毛といった副作用を引き起こすことはない」と述べています。
イランは、この科学的な業績を手にした、世界でも限られた国の一つとなっています。
2011年 10月 25日 イランラジオ

2011年10月24日月曜日

糖尿病を完全に克服する根治療法へ

細胞シートで糖尿病根治 東京女子医大など治療法
膵臓の細胞培養し皮下移植


東京女子医科大学の大橋一夫特任准教授と福島県立医科大学の後藤満一主任教授らは、膵臓(すいぞう)の細胞(膵島細胞)をシート状に培養して移植する新しい糖尿病の治療法を開発した。マウスの実験で長期間、血糖値を正常に保つことを確認した。膵島細胞をじかに移植する治療法よりも効果が高いという。将来、iPS細胞(新型万能細胞)と組み合わせれば、糖尿病を完全に克服する根治療法の実現につながるとみている。


ラットの膵島細胞を採取し、特殊な培養皿の上で直径2センチメートル、厚さ15マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのシート状に培養した。糖尿病のモデルマウスの背中の皮膚の下に2枚のシートを重ねて移植し、約4カ月間、血糖値の変化をみた。


11匹すべてで移植後約3日目から血糖値が正常になり、エサを与えた後も糖尿病でよくみられるような異常な急上昇はなくなった。
移植したシートを調べると、膵島と同じように、β細胞が円の中心部分に集まり、外側をα細胞が取り巻いていた。β細胞は血糖値を下げるインスリンを、α 細胞は血糖値を上げるグルカゴンを出す。両細胞が規則正しく存在することで血糖値が高い時は下げ、下がると自然に正常値に戻し低血糖になりすぎるのを防いでいるとみられる。


膵島移植のように、膵島細胞を直接マウスの肝臓の血管に入れた場合、血糖値は少し下がるものの、正常値まではなかなか下がらなかった。「シート化することで一定量の細胞が塊となり、効果を高めた。臨床への応用が十分期待できる」(後藤主任教授)という。


東京女子医大はカナダのアルバータ大とも共同研究を進めており、ヒトの膵島細胞のシート培養に成功した。今後、動物に移植して安全性と有効性を確認した上で、臨床応用を目指す。
また、患者から採取した膵島細胞を一定量まで増やすのは難しいため、iPS細胞から膵島細胞を作製し、シート化していくことも検討する。


2011年10月24日 日本経済新聞

東京女子医科大学

2011年10月18日火曜日

肉腫治療に新薬期待  東大が世界初ゲノム創薬 で新薬治験

肉腫治療へゲノム創薬 世界初 東大が研究、仏で治験

 これまで治療薬がなかったがんの一種、肉腫に対する新しい抗体薬を東大医科学研究所の中村祐輔教授の研究室が作り出し、承認に向けてフランスでヒトへの臨床試験(治験)を開始することが16日、分かった。この薬はゲノム(全遺伝情報)解析から標的を見つけたのがきっかけ。中村教授によると、全ゲノム情報を出発点に創薬(抗体薬)が実現すれば、肉腫治療薬の分野で世界初の成果になる。


 今回の抗体薬は腕や足などにできる「滑膜肉腫」と呼ばれる肉腫に対するもの。ゲノム研究の第一人者である中村教授が平成14年、ゲノム情報を応用する形で研究に着手。研究室でマウス実験などを繰り返した結果、肉腫治療に応用できる抗体を突き止めた。
 仏保健当局から正式承認が下り、臨床試験が仏リヨンの病院、レオンベラールセンターで12月にも始まる。仏以外の欧州連合(EU)各国にも試験を拡大する計画もある。


 滑膜肉腫を含めた肉腫は主に10代から20代に発症する命にかかわる難病だが、治療薬の開発はほとんど進んでいない。このため、治療に道筋を示した論文内容を知った欧米の患者から問い合わせが相次ぎ、患者家族が研究室を訪れたこともある。
 一方で、日本の対応は冷ややかだ。研究室では日本で臨床試験を行うため、科学技術振興機構の創薬イノベーションプログラムの補助金申請に応募したが、「開発計画の妥当性・実用化の可能性」がないとの理由で却下された。
 日本での対応とは対照的に仏の専門医からは、「非常に大きな研究成果だ。ぜひうちで臨床試験をやらせてほしい」と申し出があったという。仏からは補助金も得られることになった。
 臨床試験の準備を進めてきた創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンス(川崎市)の角田卓也社長は「肉腫の治療薬は市場が小さく大手が参入しなかった。臨床試験が成功すれば、世界の患者に治療の道が開ける」と創薬実現に期待を込める。
 ただ、中村教授は内閣官房医療イノベーション推進室長を兼ね、本来なら日本発の医薬品開発を推す立場にもある。
 中村教授は「私の研究だけでなく、角膜再生医療も日本発のシーズ(技術・情報の種)なのに臨床試験は欧州となった。その理由は創薬や先端的医療は霞が関行政の谷間にあるからだ」と、日本での体制づくりが急務と指摘している。


【用語解説】ゲノム創薬
 ヒトゲノム(全遺伝情報)を解析し、疾患や体質の原因となる遺伝子を突き止め、その情報を元に新しい医薬品やより効果的で副作用の少ない薬の研究、開発をする手法。ヒトゲノムのDNAの塩基配列が2003(平成15)年に日米英などの国際チームによって解明されたことで、創薬の動きが加速した。病気の原因に直接作用するため、薬の効果が高まることや、患者の遺伝子情報に基づいた個別の創薬も可能になることが期待されている。

2011年10月17日  産経新聞