2011年6月28日火曜日

抗がん剤副作用の死亡者救済

抗がん剤の副作用 救済検討会

抗がん剤の副作用によって死亡した患者の新たな救済制度のあり方について話し合う厚生労働省の検討会が開かれ、専門家からは、重篤な患者が死亡した場合、薬の副作用との因果関係をどのように判断するのかといった課題を指摘する声が相次ぎました。

この検討会は、重い副作用が相次いだ肺がんの治療薬「イレッサ」を巡る裁判を受けて、厚生労働省が、抗がん剤による副作用で死亡した患者の新たな救済制度をつくるために設置したもので、27日は、がん治 療の専門家や患者代表などの委員が参加して初めての会議が開かれました。この中で委員からは「救済制度があれば、患者の心理的な負担が軽減され、製薬会社 も薬の開発に積極的になるのではないか」という意見が出された一方で、「重篤な患者が死亡した場合、薬の副作用との因果関係をどのように判断するのか」と か、「救済の財源を製薬会社に求めれば、抗がん剤値段が上がるのではないか」といった課題を指摘する声も相次ぎました。

厚生労働省は、検討会での議論を参考にしたうえで、ことし12月をめどに、救済制度の具体的な内容を取りまとめることにしています。

2011年6月27日 NHK

2011年6月27日月曜日

末期大腸がんの余命延長薬

メルクセローノ、「アービタックス」が全生存期間を有意に延長することを証明

ASCO 2011:アービタックス(R)は切除不能再発大腸がんで非肝限局転移症例でも全生存期間を5.1カ月改善

●CRYSTAL試験の解析データにより、非肝限局転移KRAS野生型症例で、アービタックスが全生存期間を有意に延長したことを証明

●アービタックスがKRAS野生型症例の根治切除率を改善し、それによる治癒の可能性を高めることも明らかに

【米シカゴ、独ダルムシュタット】
Merck  KGaA(ドイツ ダルムシュタット市)の医薬品部門であるメルクセローノは、CRYSTAL試験のレトロスペクティブな解析により、アービタックス (R) (セツキシマブ)がKRAS野生型の切除不能再発大腸がん(mCRC)で、非肝限局転移症例における治療成績を有意に改善したことを発表しまし た。

この解析では、 KRAS野生型症例におけるアービタックスと標準化学療法(FOLFIRI)による一次治療の有効性を転移部位ごとに検証しました。この結果によれば、非 肝限局転移症例(non-LLD)において、アービタックスをFOLFIRIに併用した化学療法を行った群では、化学療法単独群と比較して有意な改善が得 られ、全生存期間が5カ月以上延長しました(22.5カ月対17.4カ月、p=0.013)。mCRC症例の約70%はこのように進行した非肝限局転移症 例であり(※1),(※2)、今回の結果は、KRAS野生型mCRC症例において、アービタックス併用化学療法は主要な治療目標の達成をサポートすること を示しています。

また今回 の解析においては、アービタックス併用化学療法の肝限局転移症例における根治切除(R0切除)の可能性も検証されました。その結果、R0切除率は、アービ タックスとFOLFIRIの併用化学療法を行った肝限局転移群で最も高くなりました。統計的な有意差はなかったものの、化学療法単独群と比較してR0切除 率はオッズ比で2.58倍改善されました(13.2%対5.6%、オッズ比2.58、p=0.125)。(※1)これらの結果は、CRYSTAL試験やそ の他のアービタックスの主要な試験から、(※ 3)KRAS野生型症例においてアービタックス併用化学療法が奏効率を増加させ、それに伴ってR0切除率も増加した、既に発表されている結果を支持してい ます。

ASCOで発表された報告の主著者であるドイツ、オルデンブルク病院(Klinikum Oldenburg)のクラウス・ヘニング・ケーネ教授(Professor Claus Henning Kohne(*))は次のように述べています。「進行がんの 多くの患者さんに治療がもたらす最も重要なベネフィットとは、より長く生きること、さらには治癒することです。そのため、今回のCRYSTAL試験による 新たな知見は、アービタックス併用化学療法は肝限局転移症例と、肝限局以外の転移症例のどちらにとっても重要で、両方の患者群に有効であることを明確に示 唆しました」

2011年6月10日 プレスリリース

胃がん予防で除菌できない場合

ヘリコバクター感染症

ピロリ菌は、ヘリコバクター・ピロリといいます。ヘリコバクター感染症の除菌の対象となる疾患には、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がんに対する内視鏡治療があります。

現在は主に、胃潰瘍と十二指腸潰瘍に対する除菌療法が行われています。除菌療法には、初めて除菌する1次療法と、除菌不成功例に対する2次療法が認められています。

除菌療法としては、2000年の日本ヘリコバクター学会ガイドラインで、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗生物質アモキシシリン(AMPC)、抗生物質クラリスロマイシン(CAM)を1週間投与する3剤併用療法が第1選択となりました。

当時の第1選択薬は、酸分泌抑制薬ランソプラゾール(LPZ)30ミリグラム1錠、AMPC250ミリグラム3錠、CAM200ミリグラム1錠または2錠で、この3剤を1週間、朝夕食後の1日2回投与します。この除菌法は同年に保険適用されました。

さらに、03年のガイドラインでは、PPIとしてオメプラゾール(OMZ)が保険適用に伴って追加されました。また09年には、ラベプラゾールの保険適用を受け、新治療ガイドラインが発表されました。

わが国の臨床試験では、除菌率は胃潰瘍で87・5~89・2%、十二指腸潰瘍で91・5~88%。ともに、第1選択薬で高い除菌率が得られています。 CAM量の保険適用は1回400ミリグラムか800ミリグラムですが、十二指腸潰瘍は1回400ミリグラムの方が800ミリグラムより除菌率が高くなって います。

次に2次除菌についてですが、2000年に約85~90%だった除菌率が、最近は約70%にまで低下しています。これは、CAM耐性菌の増加が原因です。

2次除菌は従来、前述の3剤併用療法が保険の適用でしたが、03年の学会ガイドラインで、CAMに代えて抗原虫薬メトロニダゾール(MNZ)を併用する 3剤療法が推奨されました。これは除菌率90%以上と有効性が高いのですが、保険適用は2次除菌のみです。また、MNZは副作用としてアルコールとの相互 作用もあるので、2次除菌中は飲酒を避けてください。

日本では現在、3次療法は保険適用外です。3次療法の抗菌薬を変更したり薬物動態を考慮したりして、研究的な治療が行われています。ラベプラゾール20 ミリグラムと、レボフロキサシン250ミリグラム、アモキシリン1グラムを、それぞれ1日2回投与することで良好な成績を残しているという報告もありま す。

浜松医科大学では▽PPZ常用量、ミタフロキサシン100ミリグラム、AMPC750ミリグラムをともに1日2回投与▽PPZ常用量、ミタフロキサニン 100ミリグラム、MNZ250ミリグラムをともに1日2回投与▽PPI常用量、AMPC500ミリグラムをともに1日4回投与▽PPZ常用量と AMPC500ミリグラムを1日4回、MNZ250ミリグラムを1日2回投与-などの3次療法で、80~94%の効果を残しています。

3次療法の必要性は今後増加するでしょう。特に、ピロリ菌と胃がんの関連は広く知られ、確実な3次療法が大事です。しかし、紹介した3次療法はいずれも保険適用されず専門施設のみで対応しています。

ピロリ菌感染が持続すると、胃粘膜が萎縮すると推定されています。分化度の高い胃がんは、萎縮胃炎を背景に発生するので、胃がんリスクの高い胃粘膜といえます。

ただ、萎縮性胃炎のある胃粘膜から必ずしも胃がんが発生するわけではありません。感染者の約90%は、萎縮性胃炎があっても症状なく過ごせます。

2011年6月26日 徳島新聞

糖尿病薬(アクトス、ソニアス、メタクト)と膀胱がん

欧州医薬品庁、糖尿病治療剤と膀胱がんの関連性を継続検討 武田薬品が発表

欧州医薬品庁(EMA)は欧州時間6月23日、6月20日から24日まで開催中の欧州医薬品評価委員会(CHMP)の月次会議の結果、2型糖尿病治療剤ピオグリタゾン塩酸塩(以下「ピオグリタゾン」)を含有する製剤による膀胱(ぼうこう)がんの発症リスク増加の有無について、継続検討していく旨を公表した。24日、武田薬品工業が発表した。

ピオグリタゾンと膀胱がんリスクの関連性については、フランス政府の医薬品規制当局が今月9日に問題を指摘。武田薬品工業の糖尿病治療薬「アクトス」などにピオグリタゾンが含まれていることから、同社はその使用方法について注意を呼びかけるとともに、関連性について独自に調査を進めている。

また同社によると、CHMPは、その諮問機関である「Scientific Advisory Group(SAG)」に、7月上旬の会議において、ピオグリタゾンと膀胱がんの発症リスクに関するデータおよび臨床現場における患者のリスク軽減策について検討することを要請。CHMPは、SAGの検討結果を踏まえて、7月のCHMP月次会議で最終的な意見を採択することもあわせて公表している。

欧州では、2011年3月から、CHMPが、欧州委員会(EC)規則No. 726/2004 第20条に基づき、関連する非臨床および臨床データを用いて、ピオグリタゾン投与による膀胱がんの発症リスク増加の有無について、関連する全ての有効性・安全性データ評価を行ってきた。

今 回の発表を受け、武田薬品工業は、「当社は患者さんの安全性を最優先に考え、これまでと同様、ピオグリタゾンを含む全ての当社製品に関する安全性と忍容性 の評価を継続するとともに、EMAならびに各国の規制当局に全てのデータを提供し、適切な対応をとっていく」とコメントしている。

一 方、同社によると、同社が支援している米国でのKaiser Permanente医療保険グループ(KPNC)とペンシルベニア大学による、2002年から10年間の疫学調査の中間解析結果では、主要評価項目であ る全体解析で、ピオグリタゾン投与と膀胱がんの発症率に統計学的に有意な関連性は認められなかったが、副次評価項目では、24ヶ月以上ピオグリタゾンを投 与した場合、膀胱がんの発症率が若干増加することが示されたという。

そ の中間解析結果は、2011年4月号のDiabetes Careに掲載され、各国の規制当局に既に報告しているという。調査は、2012年末まで継続され、その後、最終結果が報告される予定。また、欧州では、 大規模臨床試験PROactiveに参加していた患者を対象として、長期投与時の観察試験(EC455 PROactive extension trial)も実施しており、2015年に最終結果が判明する予定。

なお、日本においては、ピオグリタゾンを含有する製品(製品名:アクトス錠、ソニアス配合錠、メタクト配合錠)の添付文書中の膀胱がんに関する「使用上の注意」の一部改訂を予定しているという。米国においても、同製剤の添付文書の一部改訂についてアメリカ食品医薬品局(FDA)と協議中だという。

2011年6月26日 財経新聞

2011年6月10日金曜日

膵臓がんへ薬物複合体新薬

アステラス製薬、米国で子会社とベンチャー企業がADCプログラム「ASG-22ME」を共同開発開始

ADCプログラム『ASG-22ME』の共同開発のお知らせ

ア ステラス製薬株式会社(本社:東京、社長:野木森 雅郁、以下「アステラス製薬」)の子会社である米国アジェンシス社(英名:Agensys,  Inc.、社長:Sef Kurstjens )と米国のバイオベンチャー企業であるシアトルジェネティクス社(英名:Seattle  Genetics, Inc.、CEO:Eric L. Dobmeier)は、両社間で締結された、抗体医薬の関連技術である抗体-薬物複合体 (ADC:antibody-drug conjugate)技術(*) に関するライセンス契約に基づき、シアトルジェネティクス社が「ASG-22ME」(旧プログラム名称:AGS-22M6E)について、アジェンシス社と 共同開発を行うオプション権を行使しましたのでお知らせします。

シ アトルジェネティクス社とアジェンシス社は、2007年1月にADC技術に関するライセンス契約を締結し、2009年11月に一部修正しました。当該契約 では、ADCプログラムの一つである「ASG-5ME」について、共同開発・商業化を行い、費用および利益を両社で折半することになっており、現在、両社 ですい臓がん前立腺がんを対象とした第I相臨床試験を共同で進めています。また、アジェンシス社は、そのほか複数個の ADCプログラムについて、単独で開発・商業化を行うための独占的ライセンスを取得しており、その対価としてシアトルジェネティクス社に対し、開発マイル ストンに応じた一時金および売上に応じた一桁台半ばのロイヤリティ等を支払うことになっています。但し、シアトルジェネティクス社は、「ASG-5ME」 を除く2個のADCプログラムについて、費用および利益を折半することを条件にアジェンシス社と共同して開発・商業化を行うことのできるオプション権を有 しており、今回「ASG-22ME」について、このオプション権を行使したものです。

「ASG-22ME」は、膀胱がん乳がん肺がんすい臓がんなどの多発性がんに 発現するネクチン-4(Nectine-4)に作用する完全ヒト型抗体に、ADC技術を加えたものです。本抗体は、シアトルジェネティクス社の独自技術で ある細胞内酵素により分解されやすいリンカ―を介して、強力な合成毒素である(monomethyl auristatin E、以下「MMAE」)を結 合しています。このADCは血液中では安定でありながら、ネクチン-4を発現するがん細胞では細胞内に取り込まれた後MMAEを放出し、狙ったがん細胞のみを死滅させるよう設計されています。

アジェンシス社は、前期(2011年3月期)第4四半期に米国食品医薬品局(FDA)に対して、「ASG-22ME」の第I相臨床試験に関する治験許可申請を提出しました。この第I相臨床試験は、米国の多施設で行われ、50名までのがん患者へ「ASG-22ME」を単剤で用量漸増投与した際の安全性、忍容性、薬物動態、制がん作用を検証します。

今 後アジェンシス社は「ASG-5ME」と「ASG-22ME」について、シアトルジェネティクス社と共同で開発・商業化を行い、費用および利益を両社で折 半します。なお、本オプション権行使により、アジェンシス社はシアトルジェネティクス社よりこれまでに発生した「ASG-22ME」の開発費用の半分を受 領しますが、アステラス製薬の当期(2012年3月期)の業績へ与える影響は軽微です。

アステラス製薬はアジェンシス社とシアトルジェネティクス社共同で、画期的で最先端のADC技術を活用したプログラムの開発を進めることにより、がん治療に新たな選択肢を提供できるものと考えています。

*抗体-薬物複合体(ADC:antibody-drug conjugate)技術:がん細胞表面の抗原に結合する抗体に毒素を付け、細胞内で毒素を放出させることで、がん細胞を死滅させる技術。

2011年6月10日 プレスリリース

陽子線がん治療と医療保険

陽子線がん治療が特約対象に 民間保険で負担軽減

福井県立病院陽子線がん治療センターは8日、厚生労働省が認める先進医療に同センターの陽子線治療が適用されたと発表した。民間保険会社が扱う医療保険の先進医療特約の対象となる。加入者は高額な治療費の自己負担分が軽減されるため、同センターは利用者の増加に期待している。

同センターは3月7日に治療開始。適用要件となる10症例の治療実績を重ね、厚生労働省に1日提出した届け出が8日までに受理された。

陽子線治療費は照射20回以下が240万円、21~25回250万円、26回以上260万円。同センターによると、各保険会社の先進医療特約の給付上限額は一般的にこれらを上回るため、ほとんどの加入者は陽子線治療に対する自己負担が不要になるという。

また、陽子線治療に付随する検査、投薬、注射、入院料などは今回、公的医療保険の対象となった。これらの費用のうち7割が各健康保険制度から給付を受けられる。

利用者にとって陽子線がん治療は、治療費が高額な点がネックとなっていた。同センターは7日までに県内外の35人を受け入れ、本年度末までの患者目標数は110人。今回の適用を受け「大幅な負担軽減が図られた点を広くアピールし、受け入れ増加につなげたい」としている。

県は、県民に限り1治療当たり治療費25万円を減免、嶺南在住者の通院交通費1回当たり3千円を助成するなどの優遇制度も設けている。今後は照射治療に対する公的医療保険の適用を国に働き掛けていく方針。

2011年6月9日 福井新聞