2011年5月31日火曜日

笑いでがん細胞退治

笑いでストレス軽減 医師兼笑い療法士

「笑う門には福来る」を地でいくような資格「笑い療法士」。深刻化するストレス社会で、ぜひとも力を貸していただきたい方だ。鳥取県内でただ一人、この資格を持つ鳥取市の医師森田祐司さん(36)に、笑いを健やかな人生につなげるヒントをうかがった。

――笑い療法士になったきっかけは?

島根県の隠岐の島で勤務医をしていた頃、島根医科大(現島根大医学部)時代の指導教授から勧められた。最初は、眉唾(まゆつば)ものと思ったが、笑うこと がなぜ良いのか脳の仕組みを知るため「大脳生理学」を勉強し、笑いの起源や種類に関する講義を受けてみると、なかなかおもしろくて、2007年に取得し た。

――笑いの効果とは。

人は笑うことで免疫力が上がることが学術的にも分かっている。がん細胞と戦うナチュラルキラー細胞を活性化させ、免疫機能を正常化させるといわれている。また、ストレスを感じると増加する唾液(だえき)中のホルモン、コルチゾールの分泌が笑うことで減っていくことも分かっている。つまり笑うことで、ストレスを軽減できるというわけだ。

――笑いに種類があるそうで。

人には主に三つの笑いがある。大笑いや愉快なときに出る「快の笑い」、愛想笑いなどの「社交上の笑い」。そして、緊張がゆるんでホッとしたときに出る「緊 張緩和の笑い」。たとえ愛想笑いであってもナチュラルキラー細胞が増加したという報告もある。だから心からおもしろくなくても、笑顔を作るだけで体にも良 いとされる。

――どう診療に生かしているのですか。

資格を取ったからといって、何か特別なことが出来るわけではない。落語をしたり道化師になってみたりして、積極的に笑いを提供する人もいますが、私は患者の緊張を解きほぐして自然と笑顔がこぼれる環境を心がけている。

例えば、患者さんの目を見て話すこと。当たり前のことですが、いまはパソコンに向かって仕事する医者も多く、パソコンを見ながら「大丈夫です」と話して も、患者には伝わらないでしょ。あとは相手を否定することをしないこと。どんなに悪い診断結果が出ても「そんな食生活は駄目でしょう」と言われると、患者 もかたくなな態度を取ってしまう。医者としては当たり前のことだけど、そうではなく「こんなに結果が悪くても今まで元気にやってこられたのは、何かいいこ ともあったんじゃないですか」と肯定することで緊張をほぐせれば、患者と医者との信頼関係も出来やすいし、今後の治療もやりやすくなる。

――なぜ病院で必要ですか。

自分も勤務医として体験したが、医者が上から目線で患者に話している。「医者の言うことを聞いていればそれでいい」といった対応が多かった。病院では待た されるのも当たり前で、患者は我慢するのが当たり前になっていた。そんな患者に緊張ばかり強いるのは病気を治す環境ではない。なので、話し方や癒やしの空 間を与え、リラックスできる環境で診療していくことが医療として理想ではないかと思う。

ただ、この資格は医師限定ではなく、看護師も 持っておられるし、自分で笑うことで元気になりたいと願う患者さんも取得している。また、会社の中で職場のメンタルヘルスに役立てようと活動されている人 もいる。病院を離れて会社や家族でも、笑うことがとっても良いことだと分かってもらうのが笑い療法士の仕事なんです。

2011年5月30日 朝日新聞

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